■ おのじむ代表 行政書士 小野知己インタビュー 小野合同法務事務所(おのじむ)の代表小野知己に「おのじむの仕事」についてインタビューしました。(インタビュー/写真 熊坂仁美)
― 小野さんが行政書士になったのはいつですか?
資格を取ったのは平成16年です。それからすぐに個人事務所を開業しました。 おかげさまで業務も順調に増え続け、平成18年に合同事務所の「おのじむ」がスタートし、現在は4名の行政書士とのパートナーシップを結び業務を行っています。 ― おのじむでは主にどんな仕事をしているのですか? 主に離婚、セクハラなど市民法務に関する法的書類の内容証明や公正証書の作成などが中心です。 ― これまで何件くらい書類を作成をしたのですか? 今年で5年目になりますが、 内容証明だけでも2000件以上になりましたね。 ― 2000件!すごいですね。その中で一番印象に残っている依頼者はどんな方ですか? 一番印象に残っているのは、なんといっても開業したばかりの頃の依頼者Aさんですね。 Aさんは私の父と同じぐらいの年齢で、交通事故の後遺症で寝たきりでした。二人ほど弁護士を立てて裁判も終わって、慰謝料が確定したにもかかわらず、うまく支払って貰えなかったようでした。 両方の弁護士からさじを投げられてしまって、お会いしたときには絶望的になっていて見るからに気の毒でした。 「どうか助けて欲しい」と言われ、できる限り力になろうと思いました。無料でもやらせていただくつもりでした。 Aさんが寝ているベッドのそばに座って一生懸命話を聞き、だめもとで代書した内容証明を出しました。すると、なんと未払い金の100万円を支払って貰うとることができたんです。Aさんは一筋の涙を流して「ありがとう!」と私の手を握ってくれました。 涙を流してもらえるほど人の役に立ったのは、生まれて初めての経験でした。そのときの感動がおのじむの仕事の原点になっています。
― ところで、とっても基本的な質問なんですけど・・・内容証明って何ですか?
内容証明とは、誰が、誰に、いつ、どんな内容の手紙を出したかを郵便局が「公的」に証明してくれるもので、法的手続きでは良く使われる手段なんです。 相手に対して何か請求などアクションを起こしたという証拠の書面で、法律用語で書きますから、裁判になったときに内容証明があれば有利になります。 また、内容証明を送ったことだけで問題が解決してしまうこともあるんですよ。 相手がプレッシャーを感じて、早期に示談で解決しやすくもなるんです。 ただ注意しなければならないのは、誰が作っても同じではないこと。 内容証明は、作成者の腕が大きく問われる文書なんです。 ― 作成者の腕でどれぐらい変わるんですか? ではセクハラ被害の例で具体的にご説明しますね。 セクハラというのは、たくさんの人がいる前で行われることはまずありません。たいていの場合誰もいない密室で行われます。 ですから内容証明を作るとなると、どうしても被害者の一方的な証言になってしまいます。 でも、客観的な証拠がなれければ信用されず、裁判などでは不利です。 そこで、こういった場合私たちは守秘義務がありますので、ご本人によくヒアリングをして、本人しか知り得ない情報をどんどん聞き出すんです。 たとえば事件があった出張の履歴はもちろん、出張のホテル名、時間などを限定して、状況をできるだけ詳しく書きます。 読む人が「ここまで詳しく書いてあるのだから、まさかねつ造ではないだろう」と思って請求に応じてもらえればこっちのものです。 そして一番大事なのは、どんなふうに解決するかを予測し、ご依頼者のお気持ちを尊重することなんです。 仮に、裁判などになった場合、裁判官の心証や、相手の弁護士がどう反論するかをあらかじめ予想して内容を構成します。感情に任せて脅迫など不利にならないのは当然として、どう転んでも反論や防衛が出来るような論理構成を意識しておくことが大事です。 ― すごい!戦略的なんですね。おのじむはなぜそんなことができるんですか。 正直に言うと、中には失敗もありました。でも失敗経験から学ぶことは大きかったですね。 失敗しないように、考えて考えて内容証明を書いてきました。2000件分の経験がすべて生きているのだと思います。
― でも・・・せっかく内容証明を送っても、相手に無視されたりしてダメになることはないのですか?
あります。そのときには裁判手続きが必要となります。 おのじむではそういう場合、ご依頼者さまとの相性が大切なので、お近くの弁護士会にご紹介をしています。 提携している弁護士さんや、お近くの弁護士会をご紹介をしています。 もちろん、最初の無料相談時から「この事件の相手には内容証明は通用しないだろう」と判断する場合もあります。その場合は内容証明は作らずすぐに弁護士さんをおすすめいたします。 ― では、トラブルがあったらまず無料相談で聞くのがいいですね。 そうですね、私たちはそれをおすすめしています。できれば裁判をせずに、まず内容証明を作成して示談にて早期に円満解決する方向で進めるといいと思います。最初から弁護士に依頼し、訴訟としてしまうと時間もお金もかかりますしね。 ― 弁護士に依頼するとどれぐらい費用がかかるんですか? 300万円の慰謝料請求だと、弁護士費用はだいたい100万円ほどのようです。内容証明と示談書の作成であれば10万円ほどですみます。 もし示談にならなくて弁護士にお願いすることになっても、内容証明は裁判などの証拠として提出できるので作成費用は無駄にはなりません。 それと、行政書士という立場だからこそできることもあるんですよ。「気持ちのケア」とか・・・。
― 「気持ちのケア」ってどういうことですか?
愛情問題はお金で解決しない・・・そんな経験はありませんか? たとえば、別れた彼がお金を返さないというトラブルの場合、女性はお金を返してもらうことよりも、ただ謝ってほしいだけだったりします。 女性の気持ちって複雑ですよね。 ところが、法律というのはお金を返せと要求することができても謝ることを強要することはできないんです。「ごめんなさい」など誠意ある対応もなしにお金だけ返されても、気持ちは収まりませんよね。 そこで私たちは、依頼者が何をして欲しいかをよくヒアリングします。謝ってもらうことが第一ということであれば、謝罪すれば返済金を減額するという条件提示の例などのアドバイスもします。 弁護士は成功報酬ですから、こういうことはなかなかしてくれませんし、少額事件の受任はなかなか難しいと聞いたことがあります。 ― なるほど、気持ちの「けじめ」をつけてくれるわけですね? はい。私たちは、内容証明は「人生のスイッチ切り替えツール」だと思っているんです。 過去のトラブルのけじめをつけて気持ちをリセットして、未来に目を向けてもらいたい。そのために私たちがお手伝いできればと思っています。 トラブルを抱えて日々眠れない、と相談される方は本当に多いです。あれこれ悩む前に一度おのじむに相談をしてみてください。きっと解決の糸口が見つかると思いますよ。
(取材日時:2009年6月)
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